あなたの高コレステロール、遺伝のせいかも? 知っておきたい遺伝の話

健康寿命

健康診断で高コレステロールを指摘され、悩んでいませんか? 高コレステロールは、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。原因は食生活や運動不足だけだと思われがちですが、実は「遺伝」も大きく関係することがあります。あなたの高コレステロール、もしかしたら遺伝子の影響かもしれません。今回は、コレステロールと遺伝の意外な関係について解説します。

コレステロール値と遺伝子の関係性

コレステロールは体に必要な脂質ですが、LDL(悪玉)とHDL(善玉)のバランスが重要です。この体内でのコレステロールの生成や代謝は、多くの遺伝子によって制御されています。これらの遺伝子に生まれつき変異があると、コレステロールのバランスが崩れ、血液中の値が高くなりやすくなります。コレステロール値は、単一ではなく複数の遺伝子が影響し合う多因子遺伝の側面があり、親から子へ高コレステロールになりやすい遺伝的な素因が受け継がれることがあります。これはあくまで「なりやすい体質」であり、必ずしも発症するわけではありませんが、遺伝子は高コレステロールの一因となりうるのです。

そもそもコレステロールとは?

コレステロールは、私たちの体にとって非常に重要な脂質の一種です。細胞膜の材料になったり、ホルモンや胆汁酸を作るもとになったりと、様々な働きをしています。血液中には、主に「悪玉(LDL)コレステロール」と「善玉(HDL)コレステロール」という形で存在しています。LDLコレステロールが増えすぎると血管の壁に溜まりやすく、HDLコレステロールは血管壁に溜まった余分なコレステロールを回収する働きがあります。この二つのバランスが健康には重要です。

遺伝子はコレステロール値にどう影響する?

私たちの体の中でコレステロールが作られ、運ばれ、処理される一連の仕組みは、多くの遺伝子によってコントロールされています。例えば、LDLコレステロールを細胞の中に取り込むための「LDL受容体」を作る遺伝子や、コレステロールを分解・運搬する酵素やタンパク質に関わる遺伝子などがあります。

これらの遺伝子に生まれつき変異があると、コレステロールの代謝がうまくいかなくなり、血液中のコレステロール値が高くなりやすくなることがあります。

「遺伝しやすい体質」って本当にあるの?

コレステロール値は、一つの遺伝子だけで決まるわけではなく、複数の遺伝子が複雑に影響し合って決まる側面があります(多因子遺伝)。また、特定の遺伝子の影響が強く現れるケースもあります。

親が高コレステロールの場合、子も高コレステロールになる確率が高くなる傾向が見られるのは、こうしたコレステロール代謝に関わる遺伝的な素因が、親から子へ受け継がれる可能性があるためです。ただし、これはあくまで「なりやすい体質」であり、必ずしも高コレステロールになるというわけではありません。

特に注意が必要な「家族性高コレステロール血症」

遺伝の中でも、特に強くコレステロール値に影響し、注意が必要なのが「家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia: FH)」という病気です。

家族性高コレステロール血症(FH)とは?

家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロールを細胞に取り込むためのLDL受容体などの遺伝子に生まれつき異常があることで起こる遺伝性の病気です。この異常があると、肝臓などが血液中のLDLコレステロールをうまく回収できなくなり、若い頃から非常に高いLDLコレステロール値が続きます。

この病気は比較的頻度が高く、日本人では400~500人に1人程度が罹患していると考えられています。これは、多くの人が想像するよりもずっと身近な病気と言えるでしょう。

どんな症状が出るの?見分け方は?

家族性高コレステロール血症の最も怖い点は、自覚症状がほとんどないことが多いことです。しかし、一部の人には特徴的な症状が現れることがあります。

  • 腱黄色腫(けんおうしょくしゅ): アキレス腱や手の甲の腱などが黄色く瘤(こぶ)のように腫れることがあります。
  • 角膜輪(かくまくりん): 目の黒目の周りに白い輪ができることがあります(高齢者にも見られますが、若い人の場合は家族性高コレステロール血症が疑われます)。

ただし、これらの症状が出ない人も多いため、「家族に若くして心筋梗塞や脳卒中になった人がいる」「親や祖父母、兄弟姉妹が高いコレステロールで治療を受けている」といった家族歴がある場合は、特に注意が必要です。

放置するとどうなる? リスクについて

家族性高コレステロール血症を放置すると、非常に高いLDLコレステロール値が続くため、若い頃から急速に動脈硬化が進行します。その結果、30代~50代といった比較的若い年齢で、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患を発症するリスクが非常に高くなります。早期に診断し、適切な治療を開始することが、これらの深刻な合併症を防ぐために極めて重要です。

診断はどうするの?

家族性高コレステロール血症の診断は、主に以下の情報に基づいて行われます。

  • 血液検査: 悪玉(LDL)コレステロール値が著しく高いこと(成人では一般的に180mg/dL以上が目安となりますが、診断基準は詳細に定められています)。
  • 家族歴: 血縁者に高コレステロールの人や、若くして心血管疾患を発症した人がいないかを確認します。
  • 身体所見: 腱黄色腫や角膜輪などの特徴的な症状がないかを確認します。

これらの情報から家族性高コレステロール血症が強く疑われる場合、診断を確定するために遺伝子検査が行われることもあります。

遺伝だけじゃない! コレステロール値に影響する生活習慣

高コレステロールに遺伝が関係しても、決して諦める必要はありません。コレステロール値は、遺伝だけでなく日々の生活習慣でも大きく変動するからです。両者は複雑に影響し合います。たとえ遺伝的に高くなりやすい体質でも、健康的な生活習慣を実践することで、コレステロール値を適切に保つことは可能です。逆にリスクが低くても、生活が乱れれば高くなることもあります。特に食事は重要で、飽和脂肪酸の摂りすぎはLDLを増やし、食物繊維や不飽和脂肪酸は改善に役立ちます。また、適度な有酸素運動はHDLを増やしLDLを減らす効果が期待できます。さらに、喫煙や過度な飲酒、ストレスも影響するため、バランスの取れた生活が大切です。

遺伝リスクを知るメリットと今日からできる対策

家族に高コレステロールや心臓病の既往があるなど、遺伝的な傾向が気になる場合は、医療機関で相談し自分のリスクを知るメリットは大きいです。早期に適切な対策を始められます。たとえ遺伝リスクがあっても、食事改善は基本中の基本。肉の脂身を控え魚を増やし、野菜を多く摂るなど実践しましょう。必要なら管理栄養士への相談も有効です。また、無理なく続けられる運動を習慣にすることも大切です。そして、遺伝リスクが高い場合や生活習慣だけでは不十分な場合は、医師に相談し薬物療法なども含めた最適な治療法を見つけることが重要です。定期的な受診も続けましょう。

まとめ:高コレステロールと遺伝を正しく理解し、健康管理に役立てよう

高コレステロールの原因は一つではなく、日々の生活習慣に加えて「遺伝」も重要な要因となり得ることがお分かりいただけたかと思います。特に、家族性高コレステロール血症のように、遺伝子の影響が強く現れる病気もあります。しかし、遺伝的なリスクがあるからといって悲観する必要はありません。自分の体の状態を正しく理解し、適切な生活習慣を実践することで、多くの場合、コレステロール値を良好に保つことは可能です。また、必要であれば専門家である医師に相談し、適切な治療を受けることも大切です。もし、あなたやあなたの家族に高コレステロールや心臓病の既往がある場合は、一度医療機関で相談してみることをお勧めします。高コレステロールと遺伝の関係について正しく理解し、あなたの健康管理に役立てていきましょう。

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