食生活を見直すだけじゃダメ!高コレステロールの意外な原因とは?

健康

「高コレステロール」と聞くと、すぐに脂っこい食事や食べ過ぎを想像しませんか。健康診断で数値を指摘され、「最近、食生活が乱れていたかな」と反省する方も多いでしょう。確かに、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の多い食事は、コレステロール値に影響を与えます。しかし、食事に細心の注意を払っているにもかかわらず、なぜかコレステロール値が下がらない、あるいは高いままというケースも少なくありません。それは、私たちが陥りがちな「高コレステロール=食生活」という思い込みの罠かもしれません。実は、高コレステロールの原因は、私たちが思い浮かべる「食生活の乱れ」だけではないのです。この記事では、見落とされがちな高コレステロールの意外な原因について、分かりやすく掘り下げていきます。

悪玉コレステロールとは?放置するリスク

高コレステロールの原因を探る前に、まずは私たちが向き合っている「悪玉コレステロール」とは何なのか、そしてそれを放置するとどのような危険があるのかを正しく理解しておくことが重要です。漠然とした不安ではなく、具体的な知識が健康管理の第一歩となります。この数値がなぜ問題視されるのか、その背景を知る必要があります。

そもそもコレステロールは悪者ではない

コレステロールと聞くと、すぐに健康の敵のように思われがちですが、本来は私たちの体にとって不可欠な脂質の一種です。約60兆個ともいわれる全身の細胞を包む「細胞膜」の強さを保つ材料となったり、性ホルモンや副腎皮質ホルモン、さらには日光を浴びることで生成されるビタミンDの原料になったりと、生命維持に欠かせない重要な役割を担っています。問題となるのは、その「量」と「種類」のバランスが崩れたときです。すべてを排除すれば良いというわけではなく、適切なバランスを保つことが求められます。

悪玉と呼ばれるゆえん

一般に悪玉コレステロールと呼ばれているのは「LDLコレステロール」のことです。LDLは、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞に届ける「運搬役」の役割を担っています。体に必要なものを運ぶだけなら問題ないのですが、これが血液中に増えすぎると、運搬しきれなかったコレステロールが血管の壁に蓄積しやすくなる性質があるため、「悪玉」という不名誉な名前で呼ばれています。運搬役自体が悪いのではなく、その数が多すぎることが、健康上のリスクを高めるのです。

忍び寄る動脈硬化と心筋梗塞の影

悪玉コレステロールが血管の壁に溜まり続けると、そこに炎症が起きたり、免疫細胞が集まってきたりして、「プラーク」と呼ばれる粥状(じゅくじょう)の塊ができます。これが血管の内部を狭くし、血管自体の弾力性を失わせます。これが「動脈硬化」と呼ばれる状態です。動脈硬化は自覚症状がないまま静かに進行し、ある日突然、重大な事態を引き起こします。プラークが破れて血栓(血の塊)ができ、血管が完全に詰まってしまうと、心臓に血液が送られなくなれば「心筋梗塞」を、脳で起これば脳梗塞を引き起こす可能性があり、命に関わる深刻な病気の引き金となるのです。

見落とされがちな超悪玉コレステロール

近年、通常の悪玉コレステロール(LDL)よりもさらに小さく、血管壁の内部にまで入り込みやすい「超悪玉コレステロール(小型高密度LDLやレムナントコレステロール)」の存在が注目されています。これは、通常の健康診断では測定されないことが多く、悪玉コレステロールの総数がそれほど高くなくても、この超悪玉コレステロールが多いと、動脈硬化を急速に進行させるリスクがあるため、注意が必要です。特に食後の中性脂肪が高い状態が続くと増えやすいとされており、見えないリスクとして警戒されています。

食事以外に潜む生活習慣の問題

コレステロール値を改善しようとするとき、多くの人が真っ先に食事内容の見直しに取り組みます。しかし、揚げ物や肉の脂身を控えても数値が改善しない場合、目を向けるべきは食事以外の生活習慣です。日々の何気ない行動が、知らず知らずのうちにコレステロールのバランスを崩している可能性があります。特に、現代社会に特有の生活パターンが影響していることが多いのです。

運動不足が招くコレステロールの滞り

「運動不足」は、高コレステロールの主要な原因の一つです。特にデスクワークが中心で、日常生活での活動量が少ない人は注意が必要です。体を動かすと、血液中の中性脂肪がエネルギーとして消費されやすくなります。さらに重要なのは、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を継続することで、「善玉コレステロール(HDL)」を増やす効果が期待できることです。善玉コレステロールは、血管壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す「お掃除役」を担っています。運動不足で善玉が減ると、回収役が不足し、結果的に悪玉コレステロールが血管に残りやすくなってしまうのです。

睡眠不足とホルモンバランスの乱れ

忙しい現代人にとって「睡眠不足」は珍しくありませんが、これもコレステロール値に悪影響を及ぼします。睡眠中は、体の修復や代謝を促す成長ホルモンなどが分泌されます。睡眠時間が不足すると、これらのホルモンバランスが乱れ、脂質代謝が正常に行われなくなる可能性があります。また、睡眠不足は食欲をコントロールするホルモン(食欲を増進させるホルモンと抑制するホルモン)のバランスにも影響を与え、日中に高カロリーな食事や甘いものを過剰に欲しやすくなるという、二重の悪循環にも陥りやすいのです。

ストレス社会がコレステロールに与える影響

精神的な「ストレス」も、コレステロール値を上昇させる要因として無視できません。人間は強いストレスを感じると、体は「闘争か逃走か」の緊急事態モードに入り、対抗するために特定のホルモン(コルチゾールやアドレナリンなど)を分泌します。これらのホルモンが、肝臓でのコレステロール合成を促進してしまうことがあるのです。さらに、ストレス解消のために喫煙量が増えたり、お酒を飲みすぎたり、甘いものを暴食したり、運動を怠ったりと、結果的にコレステロールを増やす不健康な行動につながりやすい点も大きな問題です。

体質や病気が隠れているケース

食事を厳格に管理し、運動も欠かさず行っている。それなのに、コレステロール値が一向に改善しない。そのような場合、個人の努力ではどうにもならない、体質的な要因や別の病気が背景に隠れている可能性を考える必要があります。生活習慣のせいだけではないと認識することが、正しい対策への第一歩です。

遺伝が関わる家族性高コレステロール血症

生まれつきコレステロール値が非常に高くなりやすい体質があります。これを「家族性高コレステロール血症」と呼びます。これは遺伝子の変異により、血液中の悪玉コレステロールを肝臓がうまく取り込めなくなる(LDL受容体の働きが悪い)病気です。本人の食生活や運動習慣に関わらず、血液中のコレステロールが常に高い状態になってしまいます。家族や親戚にもコレステロールが高い人が多い、あるいは若くして心筋梗塞などを起こした人がいる場合、この可能性が疑われます。若い頃から動脈硬化が進行しやすいため、早期の発見と治療が非常に重要です。

疑わしい場合の遺伝子検査

家族性高コレステロール血症が強く疑われる場合、あるいは非常に高いコレステロール値が続く場合には、確定診断のために「遺伝子検査」が行われることがあります。この検査によって原因となる遺伝子の変異が見つかれば、診断が確定します。これにより、なぜ自分のコレステロールが高いのかが明確になり、より積極的な薬物治療など、個々の状態に合わせた治療方針を立てることができます。自分だけでなく、血縁者の健康管理にも役立つ情報となるため、医師から提案された場合は検討する価値があります。

甲状腺機能低下症との意外な関係

高コレステロールの原因として、意外と知られていないのが「甲状腺機能低下症」です。甲状腺は、喉仏のあたりにある臓器で、体の新陳代謝(エネルギーの利用)を活発にするホルモンを分泌しています。この機能が低下すると、体全体の代謝がスローダウンします。その結果として脂質代謝も滞り、血液中のコレステロールが適切に処理されずに増加してしまうのです。高コレステロールのほかに、「なんとなく体がだるい」「寒がりになった」「体重が増えやすい」「むくみやすい」といった症状を伴うことも多く、心当たりのある場合は内科や内分泌科での検査が勧められます。

まとめ

高コレステロールと聞くと、すぐに食生活の問題だと考えがちですが、実際にはそれだけが原因とは限りません。日々の運動不足、慢性的な睡眠不足、そして精神的なストレスも、自律神経やホルモンバランスを介して、コレステロールのバランスを崩す大きな要因となります。これらは生活習慣の見直しによって改善が期待できる部分です。一方で、どれだけ生活を改めても数値が下がらない場合、遺伝的な体質である家族性高コレステロール血症や、甲状腺機能低下症のような別の病気が隠れている可能性も否定できません。悪玉コレステロールや、さらに危険な超悪玉コレステロールの増加は、自覚症状のないまま動脈硬化を進行させ、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクを高めます。健康診断で数値を指摘されたら、食事だけを責めるのではなく、ご自身の生活全体を多角的に振り返り、不安な点があれば専門医に相談することが、未来の健康を守る鍵となります。

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